第2話「食器を片付けない男」

朝です。
先に寝ただけあって、嶋本さんが起き出してきました。

嶋本「今日から仕事やった。そろそろ準備せんとな。
あ、朝食の準備もせんと。忙し忙し」

少し遅れて真田さんも起きてきました。
既に空の隣のベッドを見て、ちょっと切なげです。

真田「嶋本はもう起きたのか……」

嶋本「昨日隊長喜んでくれたし……ちょっと気張って
もっと美味いもん作ろ。えーと、これ摩り下ろして……」

朝から凝った料理を作り始めました。

一方真田さんは、昨日嶋本さんが描いていた
油彩画が気になるようです。

真田「……(うずうず)」

手を加えちゃった。あとでバレて怒られるといいです。

嶋本「隊長ーご飯ですよー」
真田「ああ、今行く」

何気に隣に座ります。

真田「美味いな」
嶋本「ほんまっすか。へへ。ちょっと頑張りました」
真田「(可愛い……)」

そしてテーブルには昨日真田さんが食べた後
片付けなかった食器が残っています。

朝食作りに凝り過ぎてしまった為、
出勤の時間になってしまいました。
表には既にお迎えの車が来ています。
さっきからクラクションの連続です。
嶋本「……ちょ、蝿たかっとる!
んもー隊長、食器は洗うといて下さいよぅ。
食器洗い機に入れるだけやないですか」
真田「すまん」
嶋本「しゃあないなあ。今日は俺がやりますけど、
今度からちゃんと洗うといて下さいね?」
真田「努力する」
嶋本「ほんまかなぁ……」

とかなんとか後片付けと真田さんの世話をしている間に
出勤時間が過ぎ、車も行ってしまいました。
出勤初日から欠勤確定です。

速攻で決めた職業を、速攻で休んでしまった為
電話で怒られる進次。

嶋本「ほんますんません……ちょぉ、うちのデッカい子供が……
はい、……ほな、明日は必ず」

受話器に最敬礼です。

仕事が(強制的に)休みになったので、朝風呂で汗を流します。

嶋本「ま、休んでもーたモンはしゃーないわ」

切り替えも早い。

真田「ごちそうさまでした」

いつの間にか着替えていつの間にか2皿目まで食ってました。
あれだけ嶋本さんに強く言われたにも関わらず、
食器はやはり片付けない。
何か他の事でメモリがいっぱいいっぱいのようです。

メモリを食っていたのは「嶋本さんの入浴」でした。
おもむろにバスルームに入って行き、
入浴中の嶋本さんをガン見。

真田「嶋本」
嶋本「ギャ!隊長!ちょっ なんすか!?」
真田「湯加減はどうだ」
嶋本「は、はぁ。丁度ええっす、けど……」
真田「そうか。背中を流そうか」
嶋本「え!や、い、いいです。遠慮します!」
真田「そうか……」
嶋本「………………」
真田「………………」
嶋本「…………隊長」
真田「俺も入っていいか?」
嶋本「早よ出てって下さい」
真田「(残念だ……)」

バスルームを追い出された真田さんは
煙草を吸いながら拗ねています。

真田「俺はもっと嶋本と親しくしたいのに、
どうして伝わらないんだろう」

方法に問題がある事にはまだ気付いていないようです。

今度は別の中学生がやってきました。

木手「ここが凛君の言ってた家ですかね」
ぴんぽーん。

大方の予想:性格に難のある木手君相手に、
嶋本さんがブチ切れる。

嶋本「はいはい。どちらさん……あァん?
なんかものっそい嫌な見覚えのあるジャージやなぁ……」

ここまで予想通りです。

木手「こんばんは。昨日はうちの部員がご迷惑をかけたようで」
嶋本「いやもうほんとかけられました
木手「お詫びの印に、古琉球から伝わる踊りをお教えしましょう」
嶋本「琉球?沖縄?へー!そんなんあるんや。
今度高嶺の前でやって驚かせたろ」
木手「はい、では両手を上げて」
嶋本「こうか?」
木手「はい、そして、こう!」
嶋本「こっ……こうかっ!?」
木手「違います、こう!」
嶋本「こうやな!」

……後日、高嶺さんの前でやって、
「シマ、それ違いますよ」と言われるまで、
彼は自分がからかわれた事に気付きませんでした。
(親密度まで上げちゃってまぁ……)

嶋本「昨日の奴と違うて、今日の子はええ子や。
なんか作ったろ」

順調に騙されています。
相手は一番真っ黒なお腹をしている中学生です。

その頃真田さんはまだ拗ねていました。
木手君が傍で何か話しかけようとしましたが、
一向目もくれません。
その時、台所で異変が起きました。

嶋本「ぎゃっ!しもた!」

油鍋から引火して火事になってしまいました。

木手「うわっ!火事ですよ!」
真田「嶋本!大丈夫か!?」
嶋本「しょ、消火!消火せな!」

消防士が駆けつけるより先に、
率先して消火を行う嶋本さん。
男前過ぎます。

しばらく後、無事鎮火。

嶋本「……焦った……」
真田「大丈夫か、嶋本。怪我は?」
嶋本「あ、大丈夫です。すんません」
真田「そうか。嶋本に怪我がなくて良かった」
嶋本「……す、すんません」
真田「……あまり心配をかけるな」
嶋本「……た、いちょう……」

順調にフラグを立てていく二人。
そしてずっとパニくっていた木手君。
まだまだ青いです。

木手「はー、どぅまんぎましたよ。
まぶやーも落ちましたよ。落ち着かなければ……」

二人の世界に浸っている真田さんと嶋本さんを後にして
落ち着く為に木手君が取った手段は喫煙

木手君、君もか。

木手君が帰って後。

嶋本「やー、あの子、木手って子に悪い事してしまいましたわ。
火事になってもて、ビックリしたやろな」

むしろ悪い事をしてたのはあの子の方ですが。

真田「すまん、覚えていない。誰だ?
嶋本「ちょ マジっすか!」

真田さんにとってはどうでもいい子のようです。

改めてお食事タイム。

真田「こうして嶋本と二人で食事をするのにも慣れてきたな」
嶋本「そうっすねー。なんや、家族みたい」
真田「家族?」
嶋本「え、はい」
真田「『家族』?」
嶋本「……言いませんよ。俺は絶対あの単語は言いませんよ」
真田「……」
嶋本「そんな顔してもあかんですよ!言いませんよ!?」

真田さんは「夫婦」とか「新婚」とかと言って欲しかった。

真田「ごちそうさまでした」
嶋本「はい、お粗末様でした」
真田「美味かった」
嶋本「へへ。ほな俺これ片してきますわ」

そしてやっぱり真田さんはお皿を片付けない。
そんな生活にも慣れてきて、
自然に真田さんの分まで片付ける嶋本さん。
疑問を抱かなくなってきました。

続いた!

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SugakoSatoh@√310