もうちょっとおって 4
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「別にな、落ち込んでた訳とちゃうで」 「ほうか」 「ただ、儘ならんなぁ、と思うとっただけでな」 「ほうか」 「うん」
素直に頷く嶋本は、同年代のようにも見える。
「……進次さんは、真田隊長になりたいんか?」
副隊長の位置でこれまでずっと見てきた「隊長」の背中を、必死で追っているように見えたから。
「憧れとるよ」
また、胸が痛んだ。 「……憧れとるよ」
歌うように繰り返す嶋本は、これまでの真田との記憶でも思い出しているのだろうか。
「でも、俺は真田さんにはなれん。それに、なりたないなとも思うで」
違うのか?と言うように見上げる目に、実家近くの雉虎の野良猫を思い出した。
「お前が別に困らないんやったら、俺真田さんになってまおかなぁ」
考えてみれば確信犯なのだ。 「……わしが、進次さんの事好きだからじゃ……」
にゃあ。
「俺が真田さんやったら、こうしとるのも真田さんやで」
そんな想像するのも嫌だ。
「「大羽」……あかん、俺物真似の才能ないわ」
なんでこんなに楽しそうに、この人は。
「大羽」
ちょっと。 「……駄目じゃ。わし今凄い自分に都合のいい方向に物を考えとる……」 どうも今日は朝からアップダウンのきつい精神状態で困る。
「どの方向や」
進次さん、と呼んだ唇にちゅっ、と何か当たった。 「腹減ったー。大羽、腹ごしらえに行くで」 はっと我に返って、大羽が慌てて立ち上がる。
「し、進次さん、今っ」
事もなげに言うと、固まったままの大羽をよそにさっさと靴を履いてドアノブに手をかける。 「1分で来い。1秒でも過ぎたら殺すからな」
と、物騒な言葉を残してドアを閉めた。 「で、電気ヨシ、ガス栓ヨシ、財布、と、中身ヨシ……」
転ぶ勢いでドアを開けると、ジーンズの尻ポケットから鍵を引き出して、戸締りをする。
「ちゃ、着……」 ――お、鬼じゃ……
あれだけの距離でこんなに心臓が跳ね上がるといういい経験をさせてもらった。 「ま、あとでゆーっくり死ぬほど可愛がってやるわ」 にっこり笑ってそんな事を言い、軽やかに歩き始めた嶋本の背中を見つめて、大羽は心底自分の趣味の悪さを呪った。 「殺すとか死ぬとか、今更じゃのう」
いつだってその一言で、自分を天にも地にも追いやるくせに。 |
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SugakoSatoh@√310