――「お世話になりました」
違う。
――「お気をつけて」
それも違う。
――「ありがとうございました」
そりゃ、感謝はしきれんけども
何と言っていいか判らず、結局ただ、ただ頭を下げた。
***
その日の飲み会は真田の送別会の前哨戦となった。
集合時間から遅れること1時間、ヒヨコの訓練を終えて会場の居酒屋に辿り着いた嶋本は、行かないで下さいよう、と本気泣きする隊員や逆に頑張って下さい、と握手を求める別隊の隊員に律儀に応対している真田を見ながら黒岩と高嶺のテーブルに座った。
取り敢えずビール、と店員に告げるとコートを脱いで息を吐く。
「遅かったな」
「明日の確認をしてましてん……隊長いつにも増して大人気ですね」
「大抜擢ですからねえ」
大抜擢、と頭の中で繰り返した。
確かにそうだ。
最速で特殊救難隊の隊長になった後は、KPLPの初代指導官。
どこまで色んなもんを塗り替えたら気ーがすみますか、アナタ
伝説製造マシーンですか。
嶋本の心の呟きが聞こえた訳ではあるまいが、真田がふと顔を上げてこちらを見る。
どきり、とした。
と、言うよりはぎくり、とした。
真田に対して後ろめたいことなどあるはずもないのに。
まだ周囲を囲む隊員に「すまない」と断って、真田がこちらのテーブルに来る。
「お疲れさんです。ビールでええです?」
「ああ」
先程注文した中ジョッキを持ってきた店員に、「ごめんな、もう一つおんなしの」と告げて、届いたそれは真田の前にスライドさせる。
そうする間に真田がYシャツの襟をくつろげて短く息をついたのが判った。
高嶺も気付いて、苦笑する。
「流石に疲れましたか」
「少しな」
「あんだけ囲まれたら疲れますて」
「皆隊長のファンなんですよ」
「……?俺は別に有名人の類じゃない」
アナタは充分有名人です。
嶋本は心で爽やかに裏手ツッコミを入れた。
少なくともコアなファンが二人以上付いている。
まもなく店員がもう一つジョッキを運んで来たので、遅ればせながらの乾杯を交わす。
今日は、とことん飲みたかった。
***
数時間後には店を後にして、生きている隊員はそれぞれ帰路に着いた。
潰れた隊員も、殺しても死なない連中だからほっといても大丈夫だろう。
途中まで伴っていた黒岩・高嶺とも別れて、今の道連れは真田だけだ。
特に話題もなかったので黙って歩いていると、不意に名を呼ばれた。
「嶋本」
「はいっ」
条件反射で返事をすれば、真っ直ぐこちらを見ている真田と目が合った。
ぎくり。
ああ、またや。
なんやっちゅーねん。
内心の動揺を押し隠して、酒気を帯びた笑みを返す。
「タクシー、拾いましょか」
「いや」
それきり黙ってしまうので、嶋本の方が居た堪れなくなる。
それでも真田が切り出すのを根気良く待つ。
こん人はロボや。
普段使わんメモリいっぱいいっぱい、何か考えてんやろな。
漸く、真田が切り出した。
「少し話がしたいんだ」
|